Where is the heaven on the earth?

ニューカレドニアは、天国に近い島は植民地で、戦場であり続ける。日本は今、誰にとって素晴らしい国なのだろう?

 日本から気軽に行ける南洋の珊瑚礁を楽しめる観光地として、特に安価な行き先としてニューカレドニアがある。今なおフランスの植民地であり、この地は世界のニッケルの四分の一が埋蔵されているという資源豊富な島々である。植民地時代の列強の一つであったフランスは、この地を植民地とし、幸運にもその後に世界最大のニッケル鉱を見つけたのであった。 当初、本土から遠く離れたニューカレドニアに労働力を提供したのは、明治時代の日本であった。

当初は、フランス企業の期間雇用で働いていた日本人の中にも、やがて日本から家族を呼び寄せる移民も増えるのだが、太 平洋戦争開戦と同時に、敵性国家となったフランス政府は日本人をオース トラリア他の収容所に強制移動させた。日本軍は、開戦時の勢いでパプア・ ニューギニアやガダルカナル島まで戦域を拡大し、米豪軍の戦略的拠点で あるポートモレスビーに到達し、オーストラリア本土への侵攻も想定され ていた。ただし、ニューカレドニアに在住する日本人の中には現地人であるカナク族と結婚した日本人は現地に残され、戦中戦後を通じてフランス国籍も得られない無国籍人として差別の対象となったのだった。「天国に一番近い島」に登場する実在の人物ムッシュ・ワタナベもまたその一人であった。

映画「天国にいちばん近い島」には途中原作にはない逸話として、日本の潜水艦・伊号が近海で沈没した兵士の慰霊碑へ供養に訪れる未亡人が登 場する。これは監督の大林宣彦は本作に戦争や政治の重い影を前面に出すことを敢えて避け、さりげなく日本との暗い過去とのつながりを挿入したのであった。 特にこの映画が公開された1985 年当時、日本は狂乱の経済バブルが始まろうとしており、映画で女子大生だけが海外に飛行機で旅行するというのは、原作者の森村桂が渡航した1964 年には考えられないことであった。1 ドルが360 円、海外への出国規制もあり、沖縄はまだ日本に返還されていない時期である。森村はそんな時代にタンカーに乗り込み冒険のような旅に出たのであって、小説は実体験によるノンフィクショ ンなのである。

彼女が、幼少の頃、父に太平洋の向こうに天国に一番近い 島があって、そこは神様が頻繁に訪れるので、世界で一番幸せな土地だと聞かされたことから、桂は大学を卒業したばかりの年齢でニューカレドニ アに行く決意をし、偶然、気前の良い運送会社社長のおかげでタダで運搬 船に乗れることで実現したものの、世間知らずの少女はニッケル鉱山の利権を狙うスパイに間違えられたり、帰国間際に医療設備のない場所で盲腸 になってしまう。そして、そんな彼女に手をさしのべたのは、たまたま街で挨拶をした日本人と現地人の混血児で、無国籍人のムッシュ・ワタナベ だったのである。日本を全く知らずに育ち、現地人からも、フランス人か らも無視される存在だった彼にくったくのない笑顔でボンジュールと声を 掛けられたことに感動したムッシュ・ワタナベは、彼女の高額な手術代を挨拶のお礼として、惜しみなく提供するのである。亡き父の言った天国に一番近い島とは単に地理的な場ではなく、この純粋なこころの在りかだったのだと彼女は確信する。大林宣彦がうまく表現したのは、無国籍人となった日系カナク人からすれば、もはや敗戦国でもなく、世界の経済大国であり、ニューカレドニアにはない伝統的文化や歴史、四季のある自分のもう一つの祖国日本こそ、彼らにとって、天国に一番近い島だったという皮肉で、深く考えさせられるエンディングにある。

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